アルミのはんこを作ってみました。
(爪楊枝の先を細く削って、これを筆代わりに使います)
http://emochin.blog.shinobi.jp/%E5%B7%A5%E4%BD%9C/%E3%81%AF%E3%82%93%E3%81%93%E3%82%92%E4%BD%9C%E3%82%8Bはんこを作る
アルミを酸でエッチングしてはんこを作る、以前から方法は知っていたのですが中々実行に移せませんでした。
きっかけは、職場でいろいろ回覧が回ってきてそれに捺印するのですが、私はいつもひらがなの「え」をマルで囲んだサインで済ませていて、こんなはんこがあったらなー、といつも思っていました。はんこ屋さんなら作ってもらえるでしょうが、ちょっと恥ずかしいものがあります。
近所の薬局に塩酸を買いに行きましたが、しばらく前から取り扱っていないとのこと。思い当たる所を調べてくれたのですが、大学病院のそばならあるかも、という情報しか得られませんでした。
こうなると是非ともやってみたくなります。
塩酸9.5%のトイレの洗剤・サンポ-ルで試しましたが、うまくいきませんでした。
会社のそばの何の変哲もない薬局で聞いてみたら「ありますよ」。用途(エッチング)・住所を書いて署名・捺印して500mlで720円でした。
やることはハッキリしています。
1.材料を切り出してはんこの形にする。
2.腐食させたくない部分をマスキングする。
3.塩酸に浸けて腐食させる。
4.よく洗う。
5.アタリをつける。
1.材料を切り出してはんこの形にする。
まずはんこの材料から作ります。素材はA2017、通称ジュラルミンです。強度があって加工し易いのでストックしています。使うのは丸棒で、φ8、φ10、φ12あたり。
まずははんこにする面をきれいにします。
45mmくらいで切るので、その位置に突っ切りで切込みを入れます。エッチングに失敗すると削ってやり直すので、だんだん短くなっていきます。
切込みを入れた位置まで一皮剥いて、
もう一皮剥いて仕上げます。
先ほど切込みを入れたところで突っ切ります。
反対側は丸く仕上げて、
外側は完成。
この後にはんこ面を#320の耐水ペーパーで軽く荒らします。
マスキングの乗りを良くするためですが、効果は分かりません。
2.腐食させたくない部分をマスキングする。
はんこの面にシリコン(正確にはシリコーン)コーティング材で、エッチングしたくない部分をマスキングしていきます。シリコンを爪楊枝ではんこ面にチョンチョンと乗せていく感じです。
このシリコンは空気中の湿気に反応して弾性硬化するものです。チューブから出して10分くらい経つと作業がしにくくなってくるのでまた少し出します。
文字は雪(ゆき)と月(むーん)です。はんこなので、左右逆に描いていきます。フリーハンドなので中々思い通りになりません。
外側はサクラの花びらをかたどりました。
時々鏡に映して出来栄えを確認します。
「古印体」という書体にしてみました。
空きスペースに音符を配置しました。
外周も先のほうだけシリコンを乗せます。
はんこ面のマスキングが出来ました。
数時間硬化を待ちます。
硬化したのを見計らってテープでエッチングしたくない部分をマスキングします
割り箸を抱かせてエッチング準備完了。
はんこ面のマスキングに、最初は油性マーカーでやっていました。しかしエッチング中に落ちてしまうことが多く、マーカーの種類を変えたり、ドライヤーで温めたりしてみたもののあまりいい結果は得られません。けど、上手く行くときもありました。
今の方法は上のようにシリコンのコーティング材を使っています。油性マーカーに比べるとだいぶ取れにくくなりました。手元にあった白シリコンと黒シリコンを試しましたが、白はアルミの素地だととても見づらいので黒にしました。硬化時間は黒の方が長いですが、その分作業時間も多く取れるのでいいかな。といっても使えるのはチューブから出して10分間くらいです。
割り箸は、引き上げるときに便利なのと、エッチング面を下向きに浸けると、反応するときに発生する泡(水素)が邪魔をして不均一になるのを防ぐためです。
3.塩酸に浸けて腐食させる。
作業場は脱衣場の洗濯機の上。風呂場の換気扇を回して、脱衣場の窓を少し開け、空気の流れを作っておきます。塩酸からは塩化水素(有毒)が気化し、反応中は水素が発生します。いずれもたいした量ではありませんが、換気には気をつけます。風が強いと、室内の空気の流れも乱されるので中止です。
塩酸の濃度はいろいろ試しましたが最適が何%かは、正直言うとまだ分かりません。温度によっても変わるようです。最初10%程度で良いという情報があったので試しましたが、中々反応が進みませんでした。15%で試したところ、中々進まないときと(30分以上)すぐに反応して行き過ぎるときと(10分)、一向に安定してくれません。
今は濃度18%、湯煎しながら10分くらいを目安にエッチングしています。
反応が遅いときはマスキングが徐々に剥がれてくるので失敗し、早いときは腐食しすぎて失敗します。
材料によっても違うようで、A2017と思っていたものもひょっとしたら違うのかもしれません。エッチング面が白くなるのと黒っぽくなるものがあります。
エッチング液の量はこんなもんです。塩酸(36%)7ml+水7ml、これに1~3本くらいを突っ込みます。
これは失敗例、エッチングが進まないうちにマスキングが剥がれてきて失敗しました。失敗作は削ってまたやり直します。
4.よく洗う。
エッチングの頃合いを見計らって引き揚げ、よく水で洗って塩酸を落とします。シリコンのマスキングもこそぎ落とします。
今回は一部エッチング不足の場所があったので、小型のリューターで部分的に修正しました。
最終的に#320の耐水ペーパーではんこ面を整えます。
5.アタリをつける。
はんこの上下の目印の凹み(アタリ)を加工して出来上がり。
アタリは実印用には付けないそうです。じっくり慎重に捺さなければならないからだそうで。
これが今回作った印影。まだまだって感じですが、これ以上あまり上手くなるとも思えません・・・。
おしまい
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